2009年2月27日

船場の村野さん

ちょっと必要があって、船場に建築家・村野藤吾の作品がどのくらい残っているのか調べてみた。
結果は4つ。何となくもう少しあるような気がしていたけれど、この狭い範囲のなかで4つなら上出来というべきか。

輸出繊維会館(1960)



外観は一見あっさりとしてみえますが、エントランスホールとか地下とか、それはもう・・・(内部要許可)

フジカワ画廊(1953)


ガラスブロックで構成されたファサードが特徴的です。ガラスブロックの質感も今の製品とは風合いが異なります。バルコニーの手摺などとても工芸的です。

森田ビル(1962)


先のふたつに比べると地味な存在かもしれませんがこれも村野作品。同じパターンを執拗に反復するファサードは村野作品によくみられますが、じっと眺めていると外壁の質感もあって何だか不気味です。エントランスの前に立つ柱上部のとても微妙なアールはやはりすごいよ村野さん。

旧東京銀行大阪支店(1970)




今回調べるまで、この銀行が村野作品だとは知りませんでした。目の前を徒歩や自転車で数え切れないくらい通っているのに。でも調べて気付いてそういえば、窓のランダムな配置や、めくれ上がった外壁の石張りが前から気になってはいたんだと思い出しました。意識にのぼるかのぼらないかのラインで何となく気になっている建築、街にはそんな建築がたくさんありそうです。さすがに村野藤吾の作品ともなれば知っているべきところですが、街のビル建築はそのくらいでちょうどいいんだよ、と村野さんに教えられているような気もしたりして。

2009年2月23日

もうひとつお知らせ「大阪の近代建築・戦後建築の魅力を発見する」

ビルマニアカフェのメンバー、岩田雅希・阪口大介・高岡伸一の3名がユニット「bmc」で下記シンポジウムに出演します。
錚々たる顔ぶれのなかで明らかに浮いてますが、そこを逆手に戦後建築の魅力を猛烈にアピールしたいと思っています。
是非お越し下さい。

大阪歴史博物館シンポジウム
「大阪の近代建築・戦後建築の魅力を発見する」
日時:3月8日(日)13:30-16:30(開場13:00)
会場:大阪歴史博物館4階講堂(大阪市中央区大手前4-1-32)
定員:250名同日先着順受付
参加費:500円

パネリスト
橋爪節也(大阪大学教授)
橋本健治(意匠人設計房主宰)
橋寺知子(関西大学准教授)
bmc(岩田雅希・阪口大介・高岡伸一)

詳しくはコチラ。
大阪歴史博物館HP

お知らせ「船場建築散歩(2)~戦後編~」

BMCメンバーのひとり、高岡伸一が下記催しで戦後建築について語ります。
会社や学校帰りに気軽にお立ち寄り下さい。

マンスリーアートカフェ第27日
「船場建築散歩(2)~戦後編~」
ナビゲーター:高岡伸一(建築家・大阪市立大学都市研究プラザ特任講師)
日時:2月27日(金)18:30-20:00(開場18:00)
場所:船場アートカフェ(大阪市中央区久太郎町3-2-15 三休橋エクセルビル北館B1F)
参加無料

船場の建築はレトロビルだけではない。普段何気なく前を通り過ぎる、戦後ビルの隠された魅力を明らかにします。

詳しくはコチラまで
船場アートカフェHP

2009年2月9日

合掌。マンダリンビルに捧ぐ

わたし達が愛してやまないこの年代のビル達は、
実に過渡期にいるのです。残るか壊されるか。
30~40代の脂の乗ったオトナ世代だというのに、
どんどん取り壊されているのが現状。

ちょっと景気がマシだった数年前に解体が加速しかけ、
でもこの不景気が吉と出て、解体のスピードは落ちているかに見えます。


でも・・・ビルマニアカフェの当日、
『ビルマニア不動産』としてご紹介していたあのビルも、
解体のための仮囲いに包まれて静かにその時を待っていました。

たぶん、ほとんどの方が知らないことですが、
築30年を越えるビル達は、資産価値を認められず、
次に建てられるビルのための"敷地"として、
どんなビルが建っているかを見もしない人(会社)に買われるということが、
珍しくはないのです。

新しい建物が必要とされること自体がどうかということはさておき、
その敷地を見ることもなく、
立地的な値打ちやどんな大きさのモノが建てられるかの数字だけで
土地や建物が売買されているということの不思議を伝えたくて、
そしてそれはやっぱりおかしなことで、とにかく愛がないと思うし、
よい建物ができるはずがないのではないか・・・と思ってしまう訳です。

註)このビルがそんな方に買われたという話ではありません。


追悼の気持ちを込めて・・・
この優美な曲面と、彫刻のように穿たれた三角の窓

飾らないカタカナで美しく銘打たれたサイン

タイルの微妙なグラデーション、一点で全体を引き締める金物